株の配当金を狙った長期投資を実体験を踏まえて研究。

 毎日毎日、円高だ円高だ、で、株価も冴えずの展開に、なんで円高なのか、円高で株価が上がらないのはなぜか、疑問に思うことが多々ありました。


 為替動向は企業の業績にも大きな影響を与え、したがって株価にも大きな影響が及びます。


 為替を理解しておくことは、株式の投資家としても大事なことだと考えます。


 ということで、実際に読んでみて、為替の理解にとっても役立った本を紹介したいと思います。





 まず、「弱い日本の強い円」。


 現役バリバリの為替ストラテジストによる為替の解説書で、これは投資家必読。


 著者の佐々木さんの名前は、経済誌でもお見かけします。


 為替に関わる現場の視点から、鋭い指摘がいくつもされています。


 不可思議に感じていた為替の動きや読み取り方について、納得のいく説明が得られました。


 また、ドル安よりも韓国ウォン安の是正を、という提言には大納得。


 為替についての、素晴らしい知見が得られると思います。





 それから、もう1つが「成熟社会の経済学」。


 新古典派でもなく、ケインズでもない、成熟した経済の下で必要なマクロ経済政策の提言がなされています。


 マクロ経済についての本なのですが、後半部分に為替の解説も入っていて、経済の動きと絡めて分かりやすく書かれていました。


 実際に投資していて感じる疑問点を、きっちりと解き明かしてくれると思います。


 敷居が高そうと思うかもしれませんが、一般の人にも読めるように小難しい図表や計算式などはなし。


 とっつきやすいですから、一度目を通しておくとよいと思います。


 為替や経済にとどまらず、自分の日々の生活をどうしていくべきなのかも考えさせられました。





 上記2冊、どちらも役に立つ良い本だと思います。





<追記>


 新興国通貨と日本経済の関係をつかむのに、「エマージング通貨と日本経済」という本もお勧めです。


 佐々木さんの部下の棚瀬さんが執筆されていて、新興国各国の通貨と値動き、その理由が詳しく解説されています。


 内容はやや難しめ。


 「弱い日本の強い円」を読んでおいてから読むと、より内容が理解できるんじゃないかと思いました。


株は配当金を狙ってTOPに戻る


続き


 ざくっと為替の性質を捉えるならば、それは通貨の価値によって決まるということになります。


 そして、その通貨の価値は、国力とか経済力によって決まるものではなく、その国の物価上昇率によって決まります。


 「長期的には」物価が上昇する国の通貨は安くなり、反対に、物価が維持される国の通貨はそういった国との比較において高くなるということです。


 日本はデフレないし物価維持の傾向が続いていますから、物価が上昇する外国との関係では円高傾向が続くということになります。


 このままの状態が続くとすれば、チャートから見て次の円安のピークは115円であるという指摘が、「弱い日本の強い円」でされていました。(米ドル円で)


 今後は、日米の物価上昇率に気をつけながら、この数字を意識しておくといいのでしょう。


 つまり、日本で物価が上昇しないまま円安方向となって景気も回復した場合、115円近辺までドルが上昇すれば、それによって業績を伸ばしている輸出企業に対して、相当の警戒感を持っておくべきということです。





 日本の円高は、新興国との関係では妥当しないのではないかと思っていましたが、これも勘違いであることが「ウォン安」を何とかすべきという「弱い日本の強い円」の指摘で分かりました。


 実際、多くの新興国では、昔の日本と同じく為替の安定や自国の輸出産業保護のために自国通貨を米ドルなどに連動させています。


 自分の投資体験でも、中国株投資で香港ドルの動きによって成績が上下動しているのに気付いて、どうなっているのだろうと調べてみたことがあります。


 せっかく株価が上昇しても、香港ドル安により上昇分が打ち消されたり、株価下落とのダブルパンチで下落分が実質的に大きくなったりしていたのです。


 中国の人民元についても、「成熟社会の経済学」において、1990年前後と2011年時点を比べると、1人民元あたり30円程度から12円にまで下がり、円の価値は2倍から3倍に跳ね上がっているとの指摘がありました。


 その昔、親戚の子どもに小遣いと言って100人民元を渡し、「高くなるからずっと持っていなさい」なんてことを言った記憶があるのですが、大ウソだったようです。w


 実際には、安くなる一方の紙切れをつかまされて、この子どもにとっては災難になったわけですが、お互いに良い勉強にはなったといったところでしょうか。


 投信などの勧誘で、中国株が高騰しているとか、その他の新興国株が人気だとか言われたら、是非、円ベースでどうなっているのかを気にしてみてください。


 一見、長期的に株価が大きく上昇していても、為替で円ベースでの投資成績が減殺されていることもあります。


 常に実質的な視点を忘れずにいるということは、投資においてとても大事なことであると感じています。





 この他、「成熟社会の経済学」では、円高は日本企業の強さの裏返しであり、この円高を招く輸出企業の強さが、比較優位を通じて輸出企業間で食い合いをしている可能性にも目を向けさせられました。


 端的に言えば、トヨタやホンダのライバルはヒュンダイやフォルクスワーゲンに限らず、同じ日本の輸出関連企業でもあるということです。


 ここで仮に日本における自動車産業の生産性を100、電機産業の生産性を80としましょう。


 外国における自動車が70、電機が70とします。


 日本企業は外国企業に対し、どちらも勝っており絶対優位にあります。(あくまで仮定の話です。)


 しかし、これは為替において円高を招きます。


 そして、そうなった時に、電機は生産性で外国企業に対して絶対優位にあるにもかかわらず、国内の自動車との比較で負けているために、外国企業に負けて衰退してしまう。


 これが比較優位で現れる結果であり、このことから日本企業のライバルが日本企業である可能性にも気付かされるというわけです。


 採算の合わない事業は、どんどん海外へ移転させた上で、そこで稼ぐことによって進出先の地域経済を発展させ、海外投資で稼ぎながら円高対策をするというのも1つの方法ですね。


 実際、日本企業はこのようなやり方で、アジア諸国の繁栄にも貢献しているのだと思います。


 なお、こうしてみると比較優位は困った現象のように思われるかもしれませんが、経済学において最も重要な発見という経済学者さんもいるくらい大切な概念です。


 ここにスーパーマンがいて、この人は何をやらせても完璧にこなすことができるとします。


 つまり、絶対優位です。


 何をやっても完璧なので、仕事においても何から何までこなせばいいのですが、仕事の中には才能を発揮すべきものと他の誰かにやってもらった方が全体の生産が上がるものとがあります。


 例えば、電話の応対とか、データの入力といった雑事は、秘書を雇った方が自分が集中すべき仕事に専念できるでしょう。


 この場合の秘書が持つ能力こそが、比較優位です。


 スーパーマンにはかないませんが、スーパーマンの仕事の成果を高めるために必要な能力を持つ人です。


 この比較優位によって能力の劣る人にも皆、それぞれの能力に応じた役割を分担してもらい、全体の生産をあげることができます。


 能力に劣るからといって、世の中に不要だということは絶対にないという、重要な概念であることが分かります。


 これは為替を通じて、諸外国との関係でも言えるということなのでしょう。





 成熟社会の経済学では、効率化により生産能力が余って適切な人材配置ができないこと、仕事を求める人に適切な仕事を分担してもらうことができないことこそ、真の非効率であるという議論がされていました。


 また、自分の国さえよければいいという身勝手な考え方が、かえって自国経済の疲弊を招くという指摘もありました。


 目からウロコの様々な視点や考え方に気付かされ、投資にもきっと生かせると思います。


 個人的に最も重要な発見というか、再発見として、日本企業の強さをあげておきたいです。


 円が最強通貨であることを裏返せば、それくらい日本企業が強い競争力を備えているということです。


 実際、成熟社会の経済学でも、そういう指摘がされていました。


 進む円高を見越した最適な生産配置、その他の対策が進めばどうなるか。


 円高の進行に歯止めがかかれば、どうなるのか。


 今、どん底に沈んだ株価を見ても説得力はありませんが、未来は明るいと本気で考えています。


(但し、これは日本企業全体で見た話であり、比較優位によって苦境に立たされる企業が必ず出てくることには注意です。もっとも、景気回復や円安局面では、苦境に立たされた企業でも、強い企業以上に株価を戻す可能性はありますね。難しい投資になると思いますが、そういった株価の大きな戻りを狙うのも1つの方法だと思います。)





<付記>


 為替については、安達誠司さんの著作「円高の正体」も参考になりました。


 佐々木さんの「弱い日本の強い円」の主張の一部にも言及されていて、これは納得。


 マクロ経済については、藻谷さんの「デフレの正体」、大瀧先生の「平成不況の本質~雇用と金融から考える」という本も、それぞれの視点で不況やデフレを捉えていて興味深かったです。


 特に、後者の「平成不況の本質」では、高金利国への債券投資について、いかに危険で益のないものかが論じられており、参考になりました。


 「デフレの正体」に対しては「弱い日本の強い円」で基本としている視点にそれとなくチクリ、「円高の正体」でも書名入りでチクリ。


 「円高の正体」と「平成不況の本質」は、金融緩和をもっとやりなさい、いやリフレ論には反対だと主張が一見、正反対。


 この2つの本は、読み比べてみるとおもしろいです。


 為替も不況も優秀な論客があ~だこ~だと止まることのない議論を展開して、なお、こうだという結論が得られていないわけですから、素人からは想像もつかないくらい複雑で様々な原因が絡み合っているのでしょう。


 株式の素人個人投資家からすれば、株価が下がって企業が安く売られている時に株を買うという行動さえできればよく、そのために自分なりの大雑把な理解ができていれば問題はないと思われます。


 逆に言えば、そういった行動ができないのに、いくら正確な知識を仕込んでも無駄ということになりますね。w





さらに追記


 本文中の比較優位に関しては、藤本隆宏著「ものづくりからの復活」という本の93ページ以下に、詳細で興味深い解説がされています。


 この本も各企業の現場を見てこられた藤本教授ならではの視点がたっぷりで、比較優位に限らず、とても勉強になります。


 足りない脳みそで理解したところでは、藤本教授はものづくり国際競争において、日本にはインテグラル(統合)型アーキテクチャ(構築物。商品・製品といった方が分かりやすいでしょうか)の製造に比較優位があるとされています。


 これは他国が得意とする、部品を寄せ集めて一カ所で大量に組み立てて、はいできましたのモジュール型アーキテクチャと異なり、高度の擦り合わせを行なって複雑精妙な製品をつくりあげるものづくりのやり方です。


 比較優位なので、今後予想される様々な製造物のモジュール化の流れの中でも、よりモジュール化が難しい製品、部品の製造で優位に立てるとされています。


 日本の製造業企業に投資している身としては、とても勇気づけられる指摘でした。


 具体的に言うと、例えば、電気製品と自動車では、よりモジュール化が難しい自動車の製造が優位になり、さらに自動車のモジュール化が進んでも、組立工程は勝てずともエンジンの製造工程で優位に立てるといったことになるかと思います。


 また電気製品でも、モジュール化される中で日本国内でのものづくりを複雑な部品の製造に特化していけば、そこで十分優位に立てます。


 実際、電子部品関係の企業は、よく頑張っている印象で、この説を裏づけていると思われます。


 また、円高による競争環境の悪化に伴い、比較優位で負ける工場が出てきても、絶対優位にあるならば国内に世界最先端のマザー工場として残し、激しい競争環境の中で鍛え上げることで世界のお手本となる工場として、良い現場を日本に残せると書いておられました。


 この考え方は、ホンダの経営戦略を見聞きしたときにチラと触れた記憶があり、この本を読むことでホンダの考えているものづくりのあり方がよく理解できました。


 さらには、日本の工場の正味作業時間比率は10%程度で、トヨタ自動車でも50%程度。


 まだまだ生産性向上の余地が大きいとも指摘されていました。


 正味作業時間比率とは、消費者や顧客に向けた最終製品の設計情報が、作業時間全体の中で実際に対象物に転写されている時間の比率のことだそうです。


 例えば、従業員さんが連絡をとりあったり、工場内をウロウロと動き回っている時間は正味作業時間ではありません。


 自動車の組立であるならば、実際に部品や工具などを持って製品をつくっている時間です。


 作業に無駄が多いのであれば、そこを改善するだけでもまだまだやれそうです。


 実際に投資していて、1ドル360円から80円の円高の中でそれなりに競争力を保ってきた日本の製造業は、世界最高ではないかと考えることもありました。


 あながちおおげさな見方ともいえないのでしょう。


 個人投資家にとっては、ありきたりの経済学の教科書を読むよりは良いと思います。


 自分が経営者(個人投資家からすれば、自分が会社の経営を任せている人)になったつもりで、教授の意見に耳を傾けてみるといいでしょう。


 ただし、分量は多めなので、全部読むのは結構大変です。w