株の配当金を狙った長期投資を実体験を踏まえて研究。

 半導体DRAMメーカーのエルピーダメモリが、約4480億円と国内製造業過去最大の負債を抱えて経営破綻しました。


 実はこの会社、一時期、私のポートフォリオに組入れていたこともある会社です。


 金融危機の最中、分散投資の観点とヤマっけから、恐ろしい程値下りしていく半導体関連企業をいくつか買い下がるという無謀な試みを実行しました。


 エルピーダもその1つでした。


 リーマンショック後、国からの援助も受けて一旦は回復したかに見えましたが、ここにきて限界を迎えたようです。


 個人的な投資成績で言えば、エルピーダは反発後に売却したのでトータルプラスでした。


 うまく値幅(といっても、微々たるものでしたが)を抜いた格好ですが、これは長期投資家の視点で言えば、やる価値のないことであり、うまくやってもまったく無意味なことです。


 反省も込めて、思うところを書いておきますので、参考にしていただければ幸いです。





 まずは四季報から、直近の業績を見てみましょう。


直近の業績(百万円)   四季報2012年新春号より


      売上     営業利益    経常利益    利益
06・3  241554     144   ▲3076   ▲4708
07・3  490039   68420   63636   52943
08・3  405481  ▲24940  ▲39623  ▲23542
09・3  331049 ▲147389 ▲168757 ▲178870
10・3  466953   26845   12290    3085
11・3  514316   35788   13854    2096
12・3予 315000  ▲80000  ▲90000  ▲90000
13・3予 370000       0  ▲10000  ▲10000


      1株益    1株配
06・3    ▲48・8  0
07・3    444・0  0
08・3   ▲181・6  0
09・3  ▲1349    0
10・3     14・5  0
11・3      5・4  0
12・3予  ▲331・1  0
13・3予   ▲36・8  0


 株価は、2008年11月に1株305円で底をうった後、一旦上昇して2010年4月には2189円。


 2011年11月24日に1株355円(1単元100株)。


 PBRは0・42倍(1株純資産841・5円)


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財務(連結 2011・9) 百万円
総資産          808203
株主持分         259192
株主持分比率         32・1%
資本金          236143
利益剰余金        ▲52928
有利子負債        321066


設備投資          1175億
減価償却          1257億
研究開発           397億


キャッシュフロー      億円 カッコ内は前期の額
営業CF         1729 ( 655)
投資CF        ▲1105 (▲957)
財務CF         ▲604 ( 288)
現金同等物        1128 (1121)





 さて、見れば誰でも分かる強烈な赤字体質ですが、2007年に復活したかのような大きな利益を叩き出しているところが悩ましいです。


 この時、ROEは20%を越えていました。


 「うわっ、この先どんどんいくんちゃうか!?」という淡い期待を抱かせるには十分な成績ですが、これは景気の頂点で達成した数字です。


 当然、景気が下向けば、従来の赤字体質が顔を出します。


 長期投資では、常に最悪の場合を考えて、景気のどん底で何が起きるのか、そこできちんと黒字を確保して踏ん張りきれるのかをよく考えるべきです。


 そして、この点に確信が持てない限り、難しい投資になることは覚悟すべきであり、そういった投資はできる限り避けるのが無難です。


 次に、経営の問題ですが、悩ましいことに報道などで見ていた限り、ここの坂本社長はリーダーシップもあり、人格的にも、真摯さ、公平さを備えた人物というのが、個人的な感想です。


 人間的には、誰かさんの現保有企業の経営陣より信頼できると感じた人でした。


 実際、エルピーダのDRAM市場におけるシェアも、坂本社長就任後に伸びていたと昨日のワールドビジネスサテライトで指摘されていました。


 しかしながら、事業内容が韓国企業、しかも2社と真正面からガチンコ正面衝突で、何がしかの差別化を図ることも難しく、価格の値下りで二進も三進もいかず。


 韓国企業も死に物狂いで獲りにきている市場ですから、業界全体のために生産調整して価格の下落を止めるなどという甘っちょろいことはしてくれません。


 こうなると、円高で苦しむ日本企業は太刀打ちできません。


 巨額の設備投資を行い、最新設備を維持し続けなければ競争力の低下をもたらす事業であることも、会社の資金繰りの点からはネックだったと思います。


(上記の財務で、設備投資、その結果としての減価償却費、それから研究開発費を確認し、利益と比較してみてみてください。利益が出ないのに投資を続けなければならない難しい事業であることが分かると思います。)


 そもそもからして、エルピーダはNEC、日立、三菱電機といった電機メーカー3社の半導体DRAM部門の寄せ集めです。


 それぞれ単独では立ち行かなかった事業を統合してみたはいいが、非常に残念な結果となり、こういう統合形態の限界も感じさせます。


 要するに、事業内容はとてつもなく難しく、国際的な競争力も持ちにくい事業だったのでしょう。


 こういった事業には、いかに真摯で公正で有能なCEOを連れてきてもどうしようもありません。


 延命期間が少し伸びるくらいのものでしょう。


 国の支援を受けて、一旦延命したかに見えましたが、ここにきて破綻。


 リーマンショック後に買い下がっていた私は、国の支援を受けたときに「ああ、これはダメだ」と感じて、その後の戻りを売却しました。


 ヤマっけから、今回の暴落も買ったろうかいなと、良からぬことを考えてはいかんいかんと気を引き締めていましたが、やはり良くないアイデアだったようです。





 ということで、注意点、反省点は以下の通り。


1、最悪の不況を想定に入れましょう。最悪も想定内なら怖くありません。

2、事業内容が難しいものを避けましょう。より簡単な事業を割引価格で手に入れることに意識を集中した方がよいです。

3、いかに有能なCEOでも、競争力のない事業では手の打ちようがないことを認識しましょう。まず探すべきは良い事業です。

4、いかなる理由であれ、国の直接支援を受けてしまった企業は、もはや私企業ではなく、投資の対象からは外しましょう。一旦復活しても、また助けてくれるとの意識から経営改革が遅れるモラルハザードの問題を生じる可能性が高いです。

5、赤字は不要な事業というサインであることを認識し、定期的継続的に赤字を出す事業は避けましょう。

6、企業の統合形態には注意しましょう。弱い部門同士、弱い企業同士が統合しても、強くなることは難しいと思われます。

7、差別化ができず、新興国企業との価格競争に巻き込まれる事業に気を付けましょう。今は韓国企業に苦い思いをさせられていますが、昔はアメリカ企業と日本企業の間に見られた現象です。韓国企業が攻めてこなくても、どのみち別の新興国企業がやってきます。利益の上がらない不毛な立地を争うのは、優れた戦略とはいえないでしょう。





 株式市場は玉石混淆です。


 自分の大切なお金をどこに置いておくべきなのかは、よく考えなければなりません。


 なお、韓国のサムスン(電機)、ヒュンダイ(自動車)と正面衝突する企業は、注意深く経営動向を見守る必要ありと感じています。


 保有企業がこれに該当し赤字を垂れ流しているなら、最低限、自分のやっていることが何なのかの認識だけはしておくべきだと思います。


 個人的には、一時期とはいえ、エルピーダに投資していたことは、失敗例の1つとして良い経験になりました。


 ブログを読んでくださる方にも、是非、将来に向かって生かしてもらいたい投資経験の1つです。





<付記>


 エルピーダは日経500種に選定されていた企業で、破綻を受けて選定から外れたことが日経新聞に出ていました。


 以前書いたパシフ○ックHDも日経500種に選定されていました。


 日航も日経225種選定企業でした。


 このように指数を真似て、なんでもかんでもポートフォリオに入れてしまうと、何も返ってこないものが紛れ込みます。


 しかも、好景気で株価が高いときほど、打撃は大きくなるのです。


 このことは、自分で運用する場合には、特によく考えておくべきことだと思います。