株の配当金を狙った長期投資を実体験を踏まえて研究。

 HOYAの株主提案を拝見。


 22ある提案のいくつかは、賛成票を投じておいた。


 ほとんどは会社側の言うように、そこまで定款で定めなくてもいいのではという内容。


 提案されている定款の変更には、総会で3分の2以上の賛成が必要だったと思う。


 否決になるだろうけど、まあ、こういう提案に賛成の株主もいるんだよということで。


 それにしても、いろいろとよく調べて提案されている印象。


 定款変更の請求という形ではあるが、その実は現在の取締役、特にCEOに対する不信任のような感じ。


 提案から推し量るに、『世襲でよく経営も勉強しないでCEO職に就いておいて、ペンタックス買収のような見当違いの経営戦略を推し進め、株主の長期的利益に損害を与えるのは言語道断』ってな感じかな。


 あくまで推察に過ぎないけど。


 単にCEOを含めた経営陣の一掃の方が、総会で過半数の賛成でよくなり簡単なような気もする。


 代わりがいるのかという問題は残るし、昨年、代わりも提示していた案は否決されていたと思うが。


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続き


 ペンタックスの買収は、この株主さんの期待する方向性と違ったみたいだ。


(おそらく、決定的な原因はこれ。)


 光学分野には優位性がないので、現経営陣の行った買収は間違いであるということらしい。


 ペンタックスは赤字のカメラ部門も黒字化したようだが、確かに強豪ひしめくこの分野では大きな利益を出していくことは難しいかもしれない。


 以前も書いたけど、カメラ売り場の若いお兄さんでも、カメラでペンタックスに優位性はないと見抜いていた。


 金融危機以前、HOYAの自己資本利益率は20%超と素晴らしいROEだった。


 しかも、自己資本比率は約80%と財務レバレッジも効かせずにこの数字を達成していたのである。


 この数字に肩を並べるような事業であって、初めて買収の意味も出てくる。


 カメラ部門が黒字化したくらいでは、とても追いつかない。


 もともと買収の目的にしていたと思われる医療用器具には期待しているが、どうだろうか。


 これが何度か書いてきた買収の難しさ。


 株主からすれば、売上が増えたって嬉しくない。


 内部留保、すなわち稼いだ利益のうち配当に回らず会社に預けてあるものが、きちんと高い効率性を維持して将来に向かって利用され、それが更なる利益となって返ってきて初めて納得できるのである。


 上手に利用できないなら、株主に配当や自社株買い、それから自社株消却の形で返却しないとダメ。


 内部留保は、そもそも株主からの大切な預かりものであるということを忘れてはいけない。


 低いROEに甘んじている日本企業は、こういう意識で頑張って欲しい。


 生き残っていくことは大前提なんだけど、資本コスト(株主が株式を保有するリスクを負うことにより要求する最低限のリターン。住商では7・5%と弾いている)以下の利益しか出せない、出す気がない企業は無責任だと思う。


 企業が頑張らないと、経済がよくなるわけはない。





 取締役の報酬であるストックオプションについても、インデックス連動型というユニークな方法を提案してあった。


 株価は景気の変動でも上下するので、取締役に単にラッキーな株価上昇の利益を与えるのは問題だというもの。


 インデックス連動にしておけば、インデックスの上下に合わせてストックオプションの行使価額が調整され、インデックスを上回る株価の動きをしたときに、より大きなストックオプションによる報酬を手にすることができる。


 下落してもインデックスを上回れば、それは経営陣のお手柄ということになって、やはりその貢献が行使価額に加味される。


(↑ 実際どういうものかは明確には分からなかったけど、こういう仕組みなんだろうという推察。)


 おもしろい仕組みだと思う。


 企業統治に関して、提案内容を読むだけでも勉強になる。





 提案で指摘されているが、HOYAの社外取締役は兼任は当たり前で、兼任し過ぎではないかと思う方も。


 最大で業態の異なる6社の兼任をしている方がおり、HOYAを入れると7社となる。


 兼任先や職歴を見ても、「え~、ちょっと大丈夫ぅ~?」と思う方もいらはる。


 最近、人身事故を起こした遊園地を経営する某企業の監査役とか。


 この株主さんの問題意識も理解できる。


 数多くの兼任は、兼任している他の企業の株主に対しても、兼任しようとする企業の株主に対しても、真摯さを欠いていると感じる。


 取締役会に出席して適当に意見を言うだけでいいなら、小学生でも可能だ。


 取締役は、法律的にも「善良な管理者の注意義務」を負うのだけれど、果たして多くの兼任をしている取締役が、「善良な管理者」と言えるのだろうか。


 企業がグローバル化している現在、監視監督の範囲は下手をすると全地球規模なのである。


 またHOYAのような最先端技術を扱う会社では、それなりの専門知識も必要だろう。


 正直に申し上げて、他分野で実績を残してきても更なる勉強が必要で、兼任などしている暇はない気がする。


 この点では、提案をした株主さんの御意見に賛成だ。





 今年の総会招集通知では数多くの兼任を見てきたが、ここには企業統治や法律の予定していない独特の理屈が介在している気がする。


 つまり、名の売れた一般的に信用されそうな親しい人を選び、それにより取締役会の信用を補強する。


 そして、名前を借りる代わりに、きちんと経営するから口は出してくれるな、波風は立ててくれるなという暗黙の合意がなされる。


 もっともらしい報告と意見で取締役会は無事終了し、皆でめでたく「株主の財布の中から」お金を引き出して満足する。


 これはこれで、取締役会の円滑化はできるし、実際におかしなことがなければ誰も損しない素晴らしい仕組みだ。


 こうして取締役会は形だけになり、親しい者同士のサークル活動となる。


 取締役の椅子は、この仕組みを理解し、経営者サークルに入る者にのみ用意される。


 外部から見ると、非常に滑稽なことが粛々と行われるのである。


 HOYAの株主提案でも、『笑止千万』と評されていた。


 ご立派な肩書きを持つ法律家や学者先生が、これでもかと兼任している例もあるのだから病巣は深い。


 さて、実際にこういった問題をどう考えるべきなのだろう。


 うまく回ってりゃそれでいいじゃんと言ってしまうのも、1つの方便ではあるのだけれど……。





<おまけ:定款とは何ぞや>


 定款(ていかん)について、聞き慣れない言葉なので少し補足。


 定款とは会社の基本方針を定めた規定で、設立時に設けられ、会社の行動を拘束する。


 いわば国でいうところの憲法に相当するもの。


 近現代の憲法が行政府(国王や大統領、総理大臣といった国の長に代表される)や立法府(国会、議会)の行為から個々の国民を守るために規定されるのと同様、代表取締役や大株主といった会社を実質的に支配している人の身勝手な行動により他の株主が不測の損害を受けないよう、予め会社の方針を規定している。


 このように少数株主にとっても重要な規定なので、会社法では『議決権を有する株主の過半数の出席』と『3分の2以上の賛成』(通常は過半数)がなければ定款の変更はできないとされている。


 特別決議というものだ。


 ちなみに株式会社の重要事項には、すべてこの特別決議が必要となっている。


 逆に言えば、3分の2以上の議決権を持てば、会社の重要部分についての変更も可能となるので、会社をほぼ完全に支配できるとも言える。


 たいていの会社の議決権の3分の1以上は、現在、会社を経営しているグループかその親しい人たちによって保有されていると思うが、それはこういった理由による。