株の配当金を狙った長期投資を実体験を踏まえて研究。

 リスクとリターンについて、投資を続けてきて、よく見かける説明に対して大きな疑念を持つようになりました。


 「リスクをとり」、それによって「リターンを得る」といった説明です。


 しかし、ドラッカー先生によると、成功した企業家たちはリスク志向ではなく機会志向で、キャッシュフローをよく検討していたという話でした。


 リーマンショック後を見ていても、リスクをとりまくったあんぽんたんCEOたちは、株主からの大切な預かりものである資本を大きく毀損し、軒並み退場しました。


 私の投資先だった倒産企業の1つも、ぷすぷす煙が上がっているのに、社長が「これからはよりリスクの高い事業に進出し」みたいな抱負を語っていたように記憶しています。


 対して、バフェットじいじや信越化学の金川じいじといった、百戦錬磨の名経営者たちは、リスクをとるというよりはリスクを徹底的に調べ上げ、それを認識した上で可能な限り回避ないし最小化、あるいは適切な対応をし、リターンだけはバッチリいただいているように見えます。


 こちらもリスク志向ではなく機会志向であり、その機会に投資することが、きちんとキャッシュフロー(現金収入)を生むのかどうかということに神経を集中しているように思えます。


 投資についても、リスクをとってリターンを得るという説明が、少し違っているように思えてなりません。


 そこで、リスクとリターンについて、長期投資の観点から考えてみたいと思います。


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続き


 まずリスクについて。


 単に株価だけを見るなら、リスクとは値下りのことです。


 というより、投資においてこれ以外にリスクを表現する的確な言葉があるのでしょうか。


 これに対し、リスクとは価格の振れ幅だという説明がされることがあります。


 インデックスファンドなどを支えるランダムウォーク理論も、この前提に立っていると思います。


 しかし、短期の価格変動を捉えるならともかく、長期的に株式投資をしようというのに、このような前提に立つことが果たして正しいのでしょうか。


 この考え方によれば、株価が短期的に急落した銘柄は、その事業の性質、取締役や従業員の資質を問わず「リスクが高い」ことになってしまいます。


 逆に、株価が底堅く推移していさえすれば、取締役が借金大好きで遊び好き、従業員は働けど楽にならずでやる気なし、法令遵守意識も希薄なんてな企業の「リスクが低い」ことにもなってしまいます。


 また、リターンを株価の上昇によるキャピタルゲインであるとした場合、価格の振れ幅をリスクと捉えていると、リスクとリターンが見合いになりません。


 この考え方だと、株価が上昇することもリスクと捉えるためです。


 リスクとリターンは対の関係のはずなのに、これはどういうことでしょうか。


 株価上昇ではリスクが高くリターンがプラスになり、株価下落ではリスクが高くなりリターンがマイナスになる?


 前半部分はハイリスクハイリターンですが、後半部分はハイリスクマイナスリターン?


 リスクが高いばかりでリターンなし?


 この場合、ショート(売り)していれば高いリターンという説明も納得できますが、長期投資は基本的に売りを考えませんし……。


 私の小さな脳みそでは、さっぱりもって理解できません。


 仮に、事業が長期的競争力を持っており、取締役や従業員が優秀で事業をよく理解していると思われる企業であった場合、株価の急落は「値下りのリスクが低くなっている」ことを示しているはずです。


 つまり、絶好の投資ポイントが訪れているはずなのです。


 現に、株価が大きく下げたリーマンショック後、価格の振れ幅を現すボラティリティ・インデックスの数値は跳ね上がり、価格の振れ幅でみたリスクは恐ろしく高くなっているようでした。


 しかし、株価下落のリスクは大きく下がっており、実際は絶好の買い時でした。


 反対に、株価が大きく上昇していき、益回りや配当利回りの観点からみても、債券にリスクプレミアムを上乗せした価格とは到底思えない値段がついている場合、将来確実に来る不況のことを考えれば「値下りのリスクは高くなっている」はずです。


 こちらは、ポートフォリオにおける株式の比率を落とす時期なのではないでしょうか。


 日本のバブル期を振り返ってみれば、これも理解できると思います。





 次に、長期投資のリターンについて考えてみましょう。


 これは株価の上昇と配当収入です。


 それでは、これは「長期的に」何によってもたらされるものでしょうか。


 短期的な株価のランダムウォークの結果としてでしょうか?


 仮にそうであるなら、100年経ってもまったく利益が出ていないということだってありえそうですが、現実には株式はとんでもなく高いリターンをもたらしています。


 それは、経済の成長、言い換えれば人間社会の成長に伴い、市場に参加している企業がより多くの収益をあげていくことによるものでしょう。


 個別企業でいえば、企業の競争力、事業の性質、取締役や従業員の能力により、1株あたりの利益(もうちょっと正確にはキャッシュフロー)が「長期的に」上昇していくことによるものではないでしょうか。


 さて、値幅を抜いてやれという短中期的な視点を捨て去ると、ここから興味深い結論が出ます。


 つまり、値下りのリスクを抑えた上で、大きなリターンを得ることができるということです。


 私の知る限り、長期投資家は、この意味で長期的にほとんどリスクを負わずにリターンを得ています。


 基本的に、株価全般が急落し値下りのリスクが極小化する不景気に、しっかりと着実に自分の理解している企業の株を仕込み、じっくりと実りを待つのです。


 世界一の長期投資家は、「10年保有する気がないのなら、株式に投資するべきではない」と言っています。


 そして、理想的な保有期間を「半永久」だとも言っています。





 Chi va piano, va sano e va lontano.


 ゆっくり行く者は、安全に遠くまで行く(イタリアのことわざ)