株の配当金を狙った長期投資を実体験を踏まえて研究。

 今年から1億円以上の報酬を受け取る取締役の個別開示も義務づけられたようで、不景気から完全回復していないにもかかわらず景気のいい数字が散見される。


 取締役の報酬は会社法で株主総会の決議事項とされていて、その趣旨は、お手盛りの防止にあるとされる。


 つまり、取締役が自分で甘い評価をして、自分の報酬をかさ上げすることを禁止しようというわけだ。


 世のサラリーマンの方々も、自分で自分の給料が決められるなら、これほど嬉しいことはないだろう。w


 最近の日経新聞の記事によると、アメリカではこういったルールはないようだ。


 取締役が提示した報酬が気に入らなければ、株主総会で取締役の選任を否決すればいいということだろう。


 日本では取締役の選任とは別に報酬も議決内容とし、取締役の報酬の総額を示して議決を得るという方式を採っている。


 個別開示はプライバシー権の問題もあり、公表する形は望ましくないので、取締役全員の報酬の総額を示す形にしているようだ。


 ちなみに、欧米では、報酬額上位5人(アメリカ)、あるいは、取締役全員(イギリス)の報酬を個別開示することになっているそうだ。


 最近、アメリカの影響もあるのか、高額報酬が散見されるようになった。


 大赤字を垂れ流して再建がちとも進まない某S銀行の外国人取締役の報酬が、業績に見合わず高額に過ぎるという金融庁のおかんむりもあって、今回の1億円以上の個別開示というお達しになったという憶測も、日経新聞で紹介されていたと思う。


 きちんと黒字を確保し、まともな経営をしている企業の取締役からすれば、とんだトバッチリだろうか。


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続き


 さて、その大赤字を垂れ流した某S銀行の外国人元CEO(既に辞任済)の御発言が、以下のものだったと記憶している。


「優秀な人材」を採用するためには、報酬を高額にする必要がある。


 金融危機で大赤字を垂れ流しておいて、優秀もへったくれもないものだと思うが、どうだろうか。


 この御発言はとても印象に残っているのだが、またしても同じことを言う企業が現れた。


 ソニー君! orz orz orz


 ストリンガー会長兼CEOに支払う金銭による報酬が4億1千万円、ストックオプションを含めると8億1千万円!


 ぷしッ!!(←思わず飛び出る鼻血)


 税金で持っていかれるとはいえ、毎年サッカーくじのトトビッグに当選してもおつりがくる。


 サムスン、LGといった韓国勢にやられ、アップルには携帯音楽市場を侵蝕され、金融危機後は赤字で工場もリストラの嵐。


 会長とCEOを兼務しているとはいえ、これは相応の報酬なのだろうか。


 あるいは相応の報酬でないとしても、それでもこれだけの報酬を「できない」トップに払っているのだということを示し、「優秀な人」を採用できるということだろうか。


 中国の故事にも「まず隗より始めよ」というものがあるが……。


 そういう理屈なら積極的にトップの報酬を個別開示し、「こんなあんぽんたんな業績だしても、いっぱいお金もらえるよ~。もっと優秀な人は、どんどんやってきて~!」とおおっぴらに宣伝すべきだが、過去にその形跡はない。


 これは、会社法が報酬を総会決議事項とした、お手盛り禁止の趣旨に反しないのだろうか。


 ずっこけているとはいえ、トヨタはソニー君より良い会社だと思うが(もちろん、会社の価値である時価総額でも上)、トヨタの経営陣の給与と比較してどうなのだろう。


 信越化学の金川じいじは、押しも押されもせぬスーパーカリスマ経営者であるが、じいじと比較してこの給与は適切だろうか。


 業種の違いがあるとはいえ、取締役の報酬に、この人たちが好んで使う「市場」の機能は全く働いていないようである。w







 個人的には、取締役の報酬に関し、故ピーター・ドラッカーの言葉を参考にしている。


 「多くても一般従業員の20倍まで」という基準だ。(ドラッカーの言葉は下記参照)


 この基準に照らせば、ソニー君の社員さんの給与は平均を基準にして4000万円。


 100歩譲って、兼務を考慮して半分でも、2000万円となる。


 1000万円の給料に、1000万円の従業員用ストックオプションか?


 最悪な業績で株価も下げているので、好景気をにらめば二重に美味しい。


 現実なら、ソニー君の社員さんは、高給をいただいて幸せのはずだ。w







 会社に報酬目的の「優秀な人材」は必要ない。


 その会社が好きで、その会社のやっている事業に興味があって、誇りと責任を持ってやれる人こそ、本当に必要な人材のはず。


 報酬は大きな要素の1つであることは間違いないが、それを前面に押し出せば、「カネの好きな人材」がやってくるだけだろう。


 こういった人材を集めてみても、目先のカネ儲けに走って転げ落ちるのは、リーマンショック後を見ていれば一目瞭然。


 それに、資本主義で何より尊重されるべきは、新たな価値を創造し雇用を生む企業家精神。


 会社という既に出来上がったハコモノに乗っかる取締役は、所詮は委任契約による株主の付託に基づき業務執行と他の取締役の監視監督を行う雇われ者に過ぎない。


 本当に優秀な人材なら、きちんと自分でリスクを負って、一から起業して自分で自分の会社を大きくし、それによって富を獲得すべきだ。


 上場会社のような社会の公器から、一般従業員とかけ離れた法外な報酬をとるやり方は、決して資本主義の精神に合致するものではないと思う。


 取締役は自分で経営に参画しており、自社の株式を自分で買えば、自分の経営次第でいくらでも高くできる。


 業務執行の対価としての「高額」報酬は、この意味でしか許容されないだろう。


 最近の取締役の報酬は、リスクは株主に負わせておいて、事業上の厳しい労務は従業員を「市場原理」に基づく安い給料で買い叩き、自分は無リスクで高報酬という構図になっている気がしてならない。


 特に欧米の企業でそう思うが、日本企業が悪い例をわざわざ真似る必要はなかろう。


 無論、業績をあげた取締役には、相応の報酬で報いるべきだと思うが、それは会社という組織を使ってのものであって、従業員や株主その他のステークホルダーとの兼ね合いで決まるべきものだと思う。


 勝っても負けても総取りのようなやり方では、決して長続きしないと思うのだが……。







 アメリカの取締役の報酬は、ちらちらと耳にするだけでも、こんなものではない。


 多分、S銀行の元CEOもソニーの会長さんも、「全然もらってないのに、何で批判されにゃならんのか」と思っているだろう。w


 このクラスの会社なら、もっともらって当然というわけだ。


 資本主義の大国アメリカで、資本主義の精神がどんどん歪められている気がしてならない。


 ドラッカーが生きていたら、何と言うのだろう。







<付記>


 「お手盛りだろっ!」とつっこみたくなるような報酬をすんなり通してしまう株主総会は、おそらく形骸化してしまっている。


 株式の持ち合いによる取締役同士の相互依存、大株主との馴れ合い(オーナー経営者自身によるお手盛り)など、原因はいろいろあるだろうが、皆で稼いだお金を1人じめでポッケにしまう大泥棒が、会社のトップに君臨している可能性がなきにしもあらず。


 取締役のやっていることがフェアでないなと感じたら、保有株式数を落とすなり、売ってしまうなりで議決権以外の意思表明(相手には伝わらないが。w)をすべきかもしれない。


 さわかみファンドのポートフォリオからは、金融危機後、ソニー君が消えてしまっている。


 どういう意図かは知る由もないが、こういう情報に触れると妙に納得してしまうのであった。


 ちなみに、バフェットCEOの給料が1000万円程度という話を本で読んだ記憶がある。


 バフェットじいじにとっては、自身が保有するバークシャーの株価上昇こそが自分の経営への評価であり報酬なのだ。


 さすがにここまでの謙抑さを要求する気はないが、きちんとリスクを負って、自らそのリスクをリターンに変えるなら、誰1人として文句は言わないだろう。







<さらに付記>


 続々と開示される取締役の報酬であるが、株式会社、特に上場会社の公器性からいうと、取締役のプライバシー(それも報酬の額だけだ)なんぞは塵芥より軽いですな。


 日経新聞の記事でライフネット生命の社長さんが仰っていたが、額がいくらであろうが全員の個別開示が原則なのだろう。


 大きな顔をしてもらえないような額なら、もらうべきではない。


 業績をあげて会社に関わる誰も彼もを豊かにして、大手を振ってもらえばよいのではなかろうか。


 仕事してる割に報酬が少なくて、もっと報酬を上げた方がいいんじゃないかってな取締役さんも見つかるかもしれないし。


 見る側も報酬額が単純に多いかどうかではなく、会社の業績などを見て評価すべきだろう。


 税金だってたくさん納めて様々な人の社会生活を支えてくれているわけだし、きちんとやってくれているなら、それに見合った報酬を出すべきだ。


 うちの投資先のオムロンの会長さんと社長さんは、1億をちょびっとだけ上回って開示となった。


 上回ったのは数百万円で、開示しないように抑えておいてもよかったろうに、微妙な数字に思わず笑みがこぼれてしまった。


 高額報酬がバレた取締役さんもいらっしゃるが、ソニー君は好きな企業なのでとても心配している。


 某自動車メーカーは、うちの自動車ツートップのライバルなので、むしろ安心している。


 負けるわけがないとの確信も抱かせてもらった。


 ソフトバンクの孫さんの報酬も1億をちょっと越えていたみたいだけど、配当収入が11億円以上あるとか。


 カネが欲しいなら、何億ものフェアでない報酬をもらう前に、財産を使って自社の株を買ったらどうだろうか。


 業績をあげて配当も増やせば、たちまち大金持ちだ。


 会社にもよりけりだろうが、従業員の平均給与などを見ても、上限は2億円程度。


 業績のことを考えるなら、現状ではもっと下が妥当な場合もあるだろう。


 それ以上の報酬はもらいすぎで、遥かに上の報酬は株主のポッケに手を突っ込む大泥棒の可能性大と考えている。


 最終的には株主総会、つまりは会社の自治的判断で決まるものだが、業績などに見合わずおかしいと思うところには投資しないようにしたい。


 現在知る限りでは、高額報酬と好業績の間には相関性は見られず、高額報酬=あまり大したことない業績、という関係性の方が強いように思う。


 金融危機の中、どこもかしこも大きな赤字を垂れ流しているのだ。


 ちなみに、ビジョナリー・カンパニーの著者は、卓越した業績による株価上昇と取締役の報酬の間には、相関性はみられないと言っている。







<参考:高額報酬の取締役を抱える企業>


 某自動車メーカーのN産        8億9千万円(現金)
 某電機メーカーのSニー        8億1千万円(4億円はストックオプション)
 某印刷会社のD日本印刷        7億8千万円
 某医薬品最大手のT薬品工業      5億5千3百万円(外国人取締役の1人)
 ↑ 誰かさん所有企業 orz
   この金額は年間200本のヒットを打って、世界戦でチームを優勝に導いてからにしてもらいたい!
 信越化学工業             5億3千5百万円
 ↑ 在任期間20年で、ほぼ毎期に増配、経営はガチ鉄壁、リスクはきっちり見極めて回避。これはちょっと特別な例かも。
 某F葉電子工業            5億1千7百万円
 某N本調剤              4億7千万円
 某娯楽機器メーカーのSガサミー    4億3千5百万円(現金)
 某F士フイルムHD          3億6千1百万円
 ファナック              3億3千1百万円
 ↑ オーナー会長さんであるが、会社の業績自体は文句をつけるのが難しい。優秀な企業だ。
 某証券会社のN村           2億9千9百万円(ストックオプション含む)


 赤色は金融危機で赤字を出すなど、個人的に相応の仕事をしていないと思う要注意の会社だ。赤字は出してなくても、どうかなと思うものもある。高額ではあるが、相応しい報酬といわれれば、そうかもしれないと個人的に納得しそうな企業として、信越化学とファナックをあげておきたい。







<さらにさらに付記>


 ちなみに、信越化学のスーパーカリスマ経営者・金川会長の報酬が、5億円程度(2億円強のストックオプション含む)とのことだ。(2010年6月30日付、日経新聞11面)


 スーパーカリスマ経営者と持ち上げたが、20年の在任期間を経て報酬は膨れ上がっているようだ。


 信越化学の従業員給与(四季報で800万円強)と比較すると、ちょっと多いなという感じ。


 会長のキャリア、年齢等を考慮すると、適切なんだろうか。


 微妙~なところ。(個人的には少しがっかり。)


 ただ、このショックで赤字を出さずに配当も維持で踏ん張り、それより以前は増配のラッシュであることを考えると、大方の株主さんにとっては納得のいく報酬か。


 金川かいちょの場合、明らかにやり手で業績も文句のつけようがないので、上げないわけにはいかず、上げればどんどん高くなりで、こんなになってるかも。


 1つの参考にはなるだろう。


 ソニー君の会長さんは、これほどの仕事をしていないことだけは確かだ。w


 外国人取締役、オーナー社長、長期在任の取締役の報酬が高くなる傾向がある。


 それぞれにお手盛りのしやすい環境があるといえそう。


 取締役のコストパフォーマンスを上げるには、こういった環境にない会社に投資すればよい。w





<覚えておきたいマネジメントの巨匠のお言葉>


 資本主義に対しては重大な疑念を抱いている。経済を最終目的として偶像化している。あまりに一元的である。たとえば、私はアメリカの経営者に対し、組織内の所得格差を20倍以上にするなと何度もいってきた。これを越えると憤りとしらけが蔓延する。経営陣が大金を懐に入れつつレイオフを行うことは、社会的にも道義的にも許されない。そのような行為が組織にもたらす憤りとしらけは、必ず高いツケとなって返ってくる。(『ネクスト・ソサエティ』)


 ピーター・F・ドラッカー





※ドラッカーの言葉を厳格に適用するなら、上限は低くなりますな。税金で40%を取られることを考えても、1億程度だろうか。





<ごく私的な注文>


 一般従業員の何十倍にもなる何億もの報酬を取るなら、まず赤字を絶対に出してはいけない。出したら、その瞬間に辞任すべきだ。また、最低限、雇用を切らないことだ。もちろん派遣も含めてだ。新規雇用も絞ってはいけない。新卒からすれば、社会への入口でいきなり首を切られたようなもんだ。誰にも自分のしでかしたヘマの結果を押し付けないなら、高額報酬でも納得はしてもらえるはず。フェアにやってくれと言いたい。





<参考:アメリカのCEOの報酬>


 2010年7月28日付、日経新聞によると、アメリカの「過去10年間の累積報酬額」トップは、オラクルのエリソン氏で18億3570万ドル(約1600億円)。


 4位にアップルのジョブズ氏で、7億4880万ドル。


 8位にヤフーのセメル元CEOで、4億8960万ドル。


 下は、記事の元になったウォールストリートジャーナル電子版の記事。


 http://online.wsj.com/article/SB10001424052748703724104575379680484726298.html?mod=WSJ_hp_us_mostpop_read


 報酬の内容にも違いがあるようだ。


 大抵はストックオプションにより莫大な報酬を手にしている。


 上位25人中、7人は時価総額を減らした大泥棒で、時価総額が増えている場合でも、同業他社の業績と比較して高額に過ぎる例もあるとか。


 高額ではあるものの、納得いく形で報酬を得ていると言えそうなのは、アップルのジョブス氏くらいかなと思う。


 制限のついた株式(おそらく、長期間、市場で売却できないようにして、株主の利益との連動性を高めているのだと思う)が報酬の大部分で、年間報酬1ドルの時もあるとか。


 株価を10年間で10倍以上にしたので、報酬も与えられた制限付き株式の評価額の上昇に伴って増えたというわけだ。


 ストックオプションは株主の利益との連動性を与えているかに思えるが、それも使われ方次第。


 市場より安い価格で取締役に付与されたり、すぐに市場で売却できるものであったり、法外な換算額を与えられたりするのでは、株主にとっても会社の長期的価値から見ても妥当とは言えなくなる。


 結局のところ、一般従業員に照らして相応の基本報酬、そして業績に見合った相応のボーナスがあり、そういった形で与えられた報酬で自社株を取締役自身が自主的に買う場合、あるいはボーナスの大部分を退任後5年間程度市場で売却できないという制限を設けた上で自社株で払う場合、最も望ましい効果が得られると思う。