株の配当金を狙った長期投資を実体験を踏まえて研究。

 不況のメカニズムは、大阪大学教授・小野善康先生の2007年の著作です。


 副題は、ケインズ『一般理論』から新たな「不況動学」へ。


 本書は現在猛威を振るう新古典派経済学に対し、リベラル派経済学の大御所・ケインズの議論を足がかりにして、様々な反論を試みています。


 ケインズの議論の何が問題だったのか、新古典派が前提とする考え方は果たして正しいのか、不況を早く抜け出すには結局どのような経済政策が望ましいのか、といったことが説得的に論じられています。


 また、平成不況の折に行われていた経済政策の意図、そしてそれが次々と失敗していった理由、なぜ現在格差社会などと言われるようになっているのか、といったことを経済学の観点から解き明かしてくれています。


 小難しい専門用語も出てきて、多少、頭からプスプスと煙が出ることがありますが、そういう部分は読み飛ばしておけばOKです。


 有益な指摘が随所に散りばめられているので、少々読み飛ばしても得る物がたくさんあるでしょう。







 経済学では未だに解決していない難問があり、それは需要不足の有無とか完全雇用(働きたい人に必ず何らかの仕事がある状態)の有無といった何だか超基本的な問題のようです。


 新古典派は需要不足はあり得ないし、したがって常に完全雇用が成立しているいう前提で議論をします。


 他方、ケインズを始めとするリベラル派は需要不足は起こりうるし、完全雇用も存在しない場合があるという前提で議論をするようです。


 結果、同じ不況のときに、両者で正反対の経済政策が立案されてしまい、経済学の存在価値そのものに疑問が生じるようなトンチンカンな状態が生じてしまうということのようです。


 平成不況の時にも、何だか腰が座らない右往左往の経済政策がとられている感じでしたが、理由は本書を読めば理解できるかもしれません。







 読んでいると、結局、不況なるものの正体は、経済活動を行う人間の心に存在するように思えてきます。


 つまり、株価や不動産価格の下落に伴い、将来への不安が増していき貨幣保有への執着が加速度的に増していく。


 結果、消費も投資も減ってしまい、総需要も減退。


 いくら利下げをしても、ジャブジャブお金を流してみても、将来が不安だから消費も投資もせずにため込むばかり。


 結果、過剰設備や人員を抱えた企業がリストラにはしり、社会に失業者という更なる不安要素を撒き散らす。


 となると、政府の採るべき政策は、人々の不安を取り除いて安心して消費できるような環境を造ることのはずなんですが、リストラを促進して失業者を増やしていくといった不安を煽るような政策を採ってしまう。


 本書では、このような政策の根底にある新古典派経済学の論理が、結局は政治的影響力の強い一部の金持ちや成功者たちに都合のよいものであり、彼らが目先の利益を追うために却って社会が非効率化され、彼ら自身の財産価値をも減少させてしまうという皮肉な結果になると指摘しています(これはガルブレイスも指摘していたことでした)。


 ようやく長い低迷を脱しつつある日本ですが、それは単に円安や新興国の成長におんぶにだっこの状態なだけではないのか。


 拡大していかない内需は、結局ごく1部の人間を優遇したに過ぎず、総需要を増やして社会全体を効率化することができない新古典派経済学の論理の破綻の現れではないのか。


 経済の面白い見方を色々と教えてもらえる良書だと思います。







 投資関係で気になるところといえば、アメリカの景気循環について面白い指摘がありました。


 アメリカでは、35年程度の周期で株価が一巡しているようです。


 これを人間の世代交代の間隔と同じと捉え、災害と同じ理屈で説明していましたよ。


 つまり、災害が起きてから1世代経つ間に災害の恐ろしさが忘れ去られ、次の災害で同じように被害を出してしまうのに似て、投資に手を出して大やけどを負った世代が引退して、怖いもの知らずの世代が社会の中心になる頃、投資活動も活発に行われはじめ好景気がやってくるということです。


 現在、日本で多くの20代が、証券口座を開設していることも指摘してありました。


 景気循環が、次のサイクルに入りつつあることを示す事象なのでしょう。


 彼らが社会の中心となり投資で大きな痛手を受ける頃、次の大きな不況がやってくるのかもしれませんね。




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コメント
この記事へのコメント
配当金太郎さんの解説を見ただけでも面白いですね。
「不況のメカニズム」もそうですが、経済の本がめっちゃ読みたくなってきました。
2007/07/11(水) 23:34 | URL | 京 #-[ 編集]
相互リンク先の人たちの話が分かるように、最低限同じくらいの知識は持っておきたいかなと思って読み始めた経済学の本ですけど、すんげぇ面白いです。
特に、長期投資をやろうかって方には、是が非でも経済学の本を読んでみてもらいたいです。
経済のダイナミズムっていうか、うねりっていうか、そういうものの正体が何かを教えてくれると思います。
そんなに難しくないから、京さんも是非読んでみてぇ~。
2007/07/12(木) 01:29 | URL | 京さんへ #-[ 編集]
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